「お前、年いくつ?」
美しい夕焼けの明かりが広いリビングを照らす中、50cmほどの至近距離でテレビをガン見しているおじさん(イタリア人)が僕に聞いてきた。
「24です」
僕は答えた。
「24!若いじゃないか!子供ではないが、まだ全然若い。俺なんか60だぞ」
僕は3週間のイタリアの旅を終えて、最後の数日間をローマからほど近いネーミという小さな村で過ごしていた。そこは、大昔に火山があった場所。当時の火山口が今は大きな湖となっており、その湖を見渡せる山の上の家に、airbnbを利用して僕は滞在していた。
そしてなぜか同じ家に、むかしイスラエルでイタリア大使館の公邸料理人として働いていたおじさんが住んでいた。
「俺がいつも若いやつにアドバイスすることだが、将来のことや仕事、またお金について、今は考えすぎるな。」
おじさんはテレビの前からは動かずに、首だけ僕の方を向けて語りかけてきた。
「どうしてですか?」
僕は気になって理由を尋ねた。
「30歳まで、特に、20代前半はとても大切な時期なんだ。俺なんかもう60だから、そんなに好奇心で溢れているわけじゃない。だが、20代はまだ時間もエネルギーも好奇心もある。その20代の時に、より多くの経験をすることが大切なんだ。なぜならば、その時に経験したことが、その後の自分自身の「人間性」をかたち作るからだ。世界を見て、異なる文化に触れ、より多くの素晴らしい経験を積むことが、とても重要なんだ。仕事やお金を稼ぐことはあとからでもできる。ただ、自分の人間性を作る時期ってのは、まさに今なんだよ。」
おじさんは一気に話した。
いま何を経験するかが、その後の自分自身の人間性を形作る。それは今までの自分の幼少期を振り返っても、確かにそうだったと納得できる事でした。しかし普段、あまりにも仕事やキャリアという事にとらわれすぎて、ついつい忘れがちな事でもありました。
「僕は今年の初めに、今年はヨーロッパに必ず行くと決めました。そして今、こうやってイタリアに来ています。その決断は、この旅が僕の人生の可能性を大きく広げることにつながると直感的に感じたからでした。そしてそれは、この旅が僕自身の人間性をかたち作ることに、きっと大きく関わっているからなのだと思います。この旅が僕自身の人間性をかたち作るきっかけになると信じています。」
僕は今回の旅に出たきっかけを思い出し、おじさんの言葉によって得た気づきを話した。
「そうさ、その通りだ!絶対にそうなるよ。イタリアだけか?ヨーロッパは広いぞ。もっと別の国も見たほうがいいぞ。国が違えば、文化も食べ物も、そこから見える景色も全部違うからな。」
そうおじさんは言って、テレビに視線を戻した。
「人生は木の成長と同じさ」
おじさんは窓の向こうに広がる森を指差して言った。
「木の成長には、根が伸びる時期があって、幹が太くなる時期があって、枝葉が広がる時期があって、最後にやっと果実が実る。焦ってはいけないよ。」
イタリアで出会ったおじさんとの対話より
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