「島にゴルフ場を」開発される南の島々、カンボジアのロンサレム島

カンボジアの港町シハヌークビルからフェリーで45分ほどの場所に、ロンサレム島はある。お隣のロン島はバックパッカーに人気のパーティアイランドである一方、ロンサレム島は静かな自然が残されているリゾートアイランドだ。

 

 

島の表玄関である東側ビーチ(サラセンベイ)は、大きな湾が形成されており、遠浅になっている。そのため波は常に穏やかで、真っ白な美しいビーチが2kmほど続いている。

 

一方、島の反対側は西に面しており、東側に比べると砂は粗いが、波があるためサーフィンに適している。また、夕暮れ時になると、真っ赤に燃える太陽が水平線の彼方へゆっくりと沈んでいく、とても美しい夕焼けを見ることができる。

 

 

僕が初めてロンサレム島を訪れたのは、3年前の2014年4月。まだカンボジアへ来てから間もないころで、なぜか手持ち資金が15ドルしかないまま島に渡って一泊した。(15ドルのうち、10ドルはシーカヤックに使った)

 

当時、島にほとんど人はいなく、バンガローも片手で数えられるくらいしかなかった。2km続くビーチは、ひたすら静けさに包まれており、もちろん携帯の電波も繋がらない。そんな何もない島で見た朝日は、これまで僕が見た中で最も美しく、力強かった。

 

 

その次に訪れたのは1年後の2015年3月。日本から遊びに来てくれた彼女と一緒に行った。前回の訪問から、たった1年だったが、建設中のバンガローがビーチにたくさんあった。2014年には欧米人観光客がほんの少しいるくらいだったが、2015年はカンボジア人の観光客が増えていた。しかしまだバンガローも完成していなかったため、カンボジア人観光客のほとんどが日帰りで、夜になるとビーチはほとんど真っ暗。島は静けさに包まれた。

 

 

そして今年、2017年5月。前回の訪問から2年ぶりにロンサレム島を訪れた。島は大きく変わっていた。2年前はシハヌークビルと島を結ぶフェリーは1〜2社くらいしかなかったが、2017年現在、およそ5社くらいまで増えていた。もちろんそれは島へ行く観光客が増えたということ。島へ到着すると、2年前に建設中だったバンガローなどは全て完成し、2km続くビーチの端から端まで、隙間なくバンガローが建てられてしまっていた。

 

 

いちばん悲しかったのは、ゴミが増えていたことだ。ビーチを歩いていると、たまに浜辺にゴミが散乱している。プラスチックやビール缶など。2014年には全く見かけなかったのに。観光客の増加に合わせて、それだけゴミも増えるということだ。

 

 

となりのパーティアイランドであるロン島なんかと比べると、まだまだゴミは少ない方だと言える。しかし、たった1~2年で、これだけ観光客が増え、その観光客相手にビジネスをする人が増え、それに伴いゴミも増えた。僕が初めてロンサレム島を訪れた2014年、「あとどれくらいでこの島は開発されてしまうのだろう。カンボジアの南の島を訪れるなら、あと数年がベストかな」と考えていたけれど、実際そのスピードの速さを目の当たりにすると、なんだか悲しい。

 

 

以前、ロンサレム島の地権者と会ったことがある。彼はシハヌークビルやカンポットなどカンボジア各地で開発事業を行なっているデベロッパーだ。ロンサレム島全体の3分の2の土地を所有している。彼曰く、ここ数年でロンサレム島に建設されたバンガローは全て、地権者である彼の許可を得ていない。地権者を無視して、カンボジア海軍が勝手に不動産業を行なっているそうだ。また、地権者である彼自身も、今後島を大々的に開発する計画を持っている。

 

 

現在、世界的に南の島の人気が高まっており、どこの島もバブリーだ。ロンサレム島でも、大したことないボロいバンガローが一泊50ドル、ちょっと小ぎれいなリゾートだと100ドルを超える。ハイシーズンになると、これが2倍の価格に跳ね上がる。

 

 

このバブリーな南の島経済圏を巡って、政府の海軍、その島の地権者、島でバンガローを営む事業者、といった様々なステークホルダー達が自分の利益を得ようとしている。それが進むと、観光客の数がさらに増加する。では、観光客の数が増えるとうことは、何を意味するのか。それは、観光客の質の低下だ。3年前のロンサレム島には、欧米人が少しだけいた。2年前は欧米人の宿泊客、そして日帰りの地元カンボジア人が増えた。2017年現在、欧米人、カンボジア人、どちらも増えた。そしてこれからの1~2年、中国人が急増すると思われる。この観光客の増加過程にて起こるのが、観光客の質の低下。モラルのない観光客が増え、彼らはゴミを捨て、自然を汚染する。

 

 

島を大々的に開発すれば、もちろん観光客は増える。しかし、増えるのは質の低い観光客だ。モラルの高いハイクオリティな観光客は、大々的に開発された島を好まない。自分の旅行が、自然環境の破壊と汚染に加担しているという認識を持つからだ。質の低い観光客が増えれば、島の開発は加速度的に進み、それに伴い、ゴミも増加し、自然は破壊される。自然が破壊された南の島に、一体誰が訪れるというのだろうか。質の低い観光客が去れば、自然が破壊された島はまるで廃墟のごとく放置され、なんの価値も持たなくなる。

 

 

それぞれが、目先の利益だけを求めて活動すると、島の環境はないがしろにされる。結果、短期的な利益は見込めるが、長期的な繁栄は望めない。彼らは自ら墓穴を掘っているようなものだ。

 

3年前のロンサレム島は、何もない島だった。そして「何もない」ということが、この島の大きな価値になっていた。

 

 

まだ、ロンサレム島の自然は豊かだと思う。今回もジャングルを歩き、土は肥沃で、多くの大木が育っていることを確認した。鳥の鳴き声も聞こえ、島の自然は多様性に富んでいると感じた。カンボジア国内を車で移動していると、ひたすら平坦な土地が広がり、木を見ることが少ない。それは、カンボジアの森林伐採率が途上国の中でも極端に高く、結果的に木の伐採された土地は痩せて何も育たなくなってしまった結果なのだ。事実、カンボジアの野菜輸入率は90%を超えている。同じようにしてロンサレム島の自然を失うことは、カンボジアにとって大きな損失になるだろう。

 

 

ロンサレム島の自然を保全しつつ、かつ経済的利益を得る方法はある。一番大事なのは、モラルの高い観光客のみを、少数だけ島に入れることだ。

 

具体的には入島制限をして、一日あたりの島に入れる観光客の数を制限する。また、入島料を設定し、島に入るためのハードルを上げ、質の良い観光客を少数のみ入島可能にする。結果的に、島内の宿泊施設はそれほどいらなくなるため、建設規制を設定する。また高い税金をかけ、かつ島の環境を保護するコンプライアンスを守れる良質な事業者のみを残す。

 

結果、島の地権者は入島料と質の良い事業者からの収入が確保される。島内の事業者にとっては、競合が減ることで良質な顧客のみを安定的に確保することが可能になる。地方政府にとっては、島からの税収が増える。結果的に島の自然は保護され、良質な顧客の口コミが広がり、長期的に島に人を呼び込むことができる。

 

 

これからの時代、サステナブルな開発が最も長期的に利益をもたらすものだと僕は信じています。ブラジルのフェルナンド・ジ・ノローニャ島はすでに入島制限を設定し、トリップアドバイザーで世界のベストビーチに選ばれました。ハワイのカウアイ島はテスラ社と協力し、島内の電力を太陽光発電システムによってカバーし、年間160万ガロンの石油燃料を削減するとしています。

 

 

今後、南の島々は、二極化するでしょう。持続可能な開発によって自然が保護された島と、一時的な利益のために大規模開発された島に。今回のロンサレム島の訪問は、ちょうどカンボジアの雨季の季節で、島は黒い雲に覆われていることが多かったです。天気のよくない南の島は、なんともいえない陰鬱な雰囲気を漂わせ、それはこの島の未来を表しているようにも感じるのです。

 

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