気候変動と、植物工場、そして、遺伝子組換え作物。食糧生産の未来について

僕は映画鑑賞が好きです。学生時代に好きだったのはショーン・ペン監督の「イントゥ・ザ・ワイルド」で、社会人になってから見た中で最も好きな映画はクリストファー・ノーラン監督の「インター・ステラー」です。

 

映画「インター・ステラー」の舞台は、近未来の地球。気候変動の影響により大規模な砂嵐が多発して人々の健康を害し、様々な病害虫の影響により農作物の生産が困難になり、食料危機が訪れている地球です。主人公は元航空エンジニアで、現在は大規模トウモロコシ畑を経営する農家。地球の寿命が尽きようとしている中、主人公は不思議な運命に導かれ、人類の新たな星を探すために宇宙の旅に出ます。

 

 

深刻化する気候変動の影響。異常気象の多発。迫り来る食料危機。映画「インター・ステラー」の中で語られる寿命の尽きかけている未来の地球とは、決して遠い未来の話ではなく、今まさに僕たちが住む地球の現状ではないでしょうか?

 

これは、そう遠くない未来であり、今現在もその未来に向かって進んでいると、僕は思うのです。

 

ではその危機はどこから始まるか?きっとそれは、赤道に近い熱帯気候の国々から始まると僕は感じます。もともと熱帯気候で暑い国々は、温暖化の影響でさらに気温が上昇し、結果、農作物は生育不良を起こし、大規模な干ばつや洪水も多発します。そして最終的には食料生産が困難になり、人々の健康にも影響が出始めると思われます。インター・ステラーで描かれる未来のように。

 

僕はいま、カンボジアに住んでいます。カンボジアに来てから、もうじき3年が経とうとしています。このたった3年間でも大きな出来事が何度もありました。2016年はカンボジアの観測史上最高気温を記録し、大規模な干ばつがカンボジア各地を襲いました。乾季の長期化や、病害虫の多発などによって、カンボジア国内の野菜の収穫量がほとんどゼロになるという状況も多発しました。

 

 

日本でも近年、大型台風の増加、夏季の異常な暑さが問題になっていると聞きます。

 

従来型の農業は、ますます困難になると思います。現在、カンボジア国内は85%〜90%の野菜をベトナムや中国からの輸入に頼っている状況で、国内で野菜を安定生産できる農家はいません。乾季の異常なほどの暑さ、そして雨季のスコールや病害虫、そして過度な森林伐採により、土壌が全く作物の育つ状態ではないのです。

 

日本でも2016年には台風の影響でレタスの値段が跳ね上がりました。アジアだけではありません。ヨーロッパの野菜生産の中心地である地中海沿岸地域の天候不順の影響により、イギリスでもレタスの価格が高騰しているというニュースがありました。

 

 

現在、世界各国が温室効果ガス削減のために動いています。特に2015年に日本が拠出を決定したことで動き始めたGrobal Climate Fundは開発途上国の温室効果ガス削減(Mitigation = 緩和)と、気候変動の影響に対する対処(Adoption = 適応)という2つのポイントにフォーカスしています。これら2つの方策である「緩和」と「適応」のうち、食糧生産という課題において大切なのは間違いなく「適応」です。これからの農業とは、オーガニックでも無農薬でもなく、いかに気候変動に「適応」することができるか、が最も重要になるわけです。

 

Photo : Green Climate Fund

 

この「適応」に該当する農業として、すでに気候変動に耐えうる農作物を育てるプロジェクトがアフリカのナミビア共和国で始まりました。このプロジェクトにGlobal Climate Fundが拠出した金額は、日本円にしてなんと10億円。今までと自然環境がガラリと変わり、従来型の農業生産が難しくなる中、どう人類の食糧を確保していくかについて、世界中が大きく注視しているのです。

 

 

そんな状況において、僕が個人的に今後大きく普及するだろうな、と思うテクノロジーは「植物工場」そして「遺伝子組み換え(のような技術)」だと思います。

 

自然環境に全く左右されずに、LEDライトと空調、そしてコンピューターによる管理によって人工的な野菜生産を可能にする植物工場。アメリカやヨーロッパ、そして日本ではすでに多くの会社が植物工場ビジネスに取り組んでいます。現在は初期投資が高すぎて採算が取れていない企業が多いですが、価格が下がってくれば一気に普及するでしょう。植物工場の初期投資額が下がるのには、もうそれほど時間はかからないと思います。オーバースペックなものしか作れない日系企業にはあまり期待できませんが、シンガポールや台湾などのアジアの企業からここ1~2年で低価格の植物工場が一気に出てくるでしょう。今後、急激に増加する東南アジアの生鮮野菜マーケットにおいては、既存の従来型農業では供給が不足しているため、植物工場によるレタス類やハーブ類の供給はより一層増えると思います。

 

 

一方、遺伝子組み換え作物についてですが、まず従来型の「遺伝子組み換え作物」は普及はしないと思います。なぜならば人々の遺伝子組み換えに対する拒否反応が非常に強いためです。納豆のパッケージの裏にも「大豆(遺伝子組み換えではない)」とよく書かれていますよね。

 

しかし、遺伝子組み換えはしていないけれども、特殊な手法を使うことによって、過酷な自然環境に耐えることができる品種は開発され、これから人々の食卓に並ぶようになるでしょう。世界中で気候変動の影響が無視できなくなる中、そういった過酷な自然環境に耐えることができる新しい品種を、世界中が求めているからです。

 

世界中の遺伝子組み換え作物の90%のシェアを持つモンサント社は、すでに遺伝子組み換えではなく、自然交配によって多種多様な品種を作り出していると、2014年にWIREDの記事で特集されています。はじめは「珍しい野菜」として高級レストランや、富裕層の間で広まっていき、その後、大量生産することでコストが下がり、一気に普及することでしょう。

 

今後、これらのテクノロジーは普及し、人々の生活の中へ入っていきます。かつての牧歌的な農業の姿は減っていき、工業的に生産された食料が増えるでしょう。好むと好まざるに関わらず、これが気候変動時代の農業の姿となるのです。各々、自分が何をどう食べるのか、真剣に考える必要があると思います。

 

僕たちはすでに、映画「インター・ステラー」に描かれる未来に生きているのです。

 

 

 

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